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Erik Caruso(エリック・カルーソ)

レコメンダー

Erik Caruso(エリック・カルーソ)小学校教師

Photo by SHIN HAMADA

2015.06.04

Erik Caruso

1980年代中期からアメリカ・西海岸各地を駆け巡ってきたACME Furniture。
ヴィンテージアイテムだけに留まらず、現地のカルチャーを多く日本に紹介してきました。

そんなACME Furnitureがアメリカ・西海岸というフィルターを通して出会った
“Makers"(ものづくりの人々)にフォーカスし、彼らの想いや素顔に迫る
インタビューをお届けいたします。

カリフォルニア州にあるハリーワーツ小学校で5年前から自らアートプロジェクトを 立ち上げたその学校の教師、エリック・カルーソ。

ハリーワーツ小学校の生徒のほとんどが移民の家族でその為に小学校を入学する時も英語が話せない子供達が多く、 英語と算数に力をいれないともっと他の地域との差がうまれてしまい、音楽や美術といった科目は二の次になっていました。

加えて、カリフォルニア州の財政難で美術や音楽の科目が削られてもいき、授業が出来ていない状況に陥っていました。 美術や音楽の先生を雇いたい場合は、PTAがお金を集めそのPTAの予算で払うのですが、貧困層が多いパラマウント市では寄付どころではありません。

そこで、教師、エリック・カルーソは自分で知り合いのアーティスト達に連絡をとり、そこからまた他のアーティストの方々への輪が広がり手伝ってもらうというやり方でsmARTプロジェクトを立ち上げました。

今回のMeet The Makersではこのアートプロジェクトに至った経緯などを本人にインタビューしております。 学校を美術館にしよう、もっと学校をもっとわくわくする場所にしたいという彼の試みをぜひ、ごらんください。

 

 

----エリックが行っているアートプロジェクトについて教えてください。

私が教えている小学5年生を対象に行っているアートプロジェクトで、2種類あります。 1つ目は、あるアーティストからお題を頂いて、そのアーティストの表現方法を元に、子供たちが自分の作品を作るというものです。プロジェクトの最終日には、食堂を貸し切って、ギャラリーのように子供たちの作品が一斉に壁に飾られ、表彰式が行われます。表彰式では、アーティストが子供たちの作品の中から気に入った作品を選出し、その理由とメッセージをビデオで流し、選出された作品を作った子供たちがその場で表彰されます。

2つ目は、ミューラムプロジェクトといって、学校内にある壁にアーティストが直接絵を描くといったプロジェクトで、すでに沢山のアーティストによる壁画が誕生しています。しかし、このプロジェクトの許可が下りるのにとても時間が掛かります。それは、プロジェクト自体をよく思っていない先生や教育委員会の方がおり、私はその方々を説得することもしております。

----時間と労力をかけてでも、このプロジェクトをスタートした理由を教えてください。

私が小学3年生のクラスを担当していた時、レスリーという子がクラスにいました。彼女は勉強において、周りの子たちと差がありました。そして、彼女はその事を気にしていました。ただ、彼女はアートの才能が他の子達よりずば抜けてありました。2年後、彼女が5年生になった際に、私は再び彼女の担任になりました。その時、学校には彼女が参加出来る美術教育もなければ、アートプロジェクトもありませんでした。勉強で、周りの子から離されていってしまう彼女に、私は週1回、勉強の変わりに様々な題材を出して、絵を描かせました。

その頃から、彼女は周りのクラスメイトから一目置かれる存在となってきました。クラスメイトは毎週彼女がどんな絵を描くのか、楽しみとなっていました。それは、彼女が自分自身を取り戻した瞬間でした。私は、もし彼女にもっと早い段階で絵を描かせていたら、彼女はもっと自分に自信が持てて、楽しい学校生活を送れていたのかもしれないし、レスリー以外にもレスリーのように絵が得意な子や音楽が得意な子、スポーツが得意な子がどれだけこの学校にはいるのだろうか。そして、彼ら彼女らに自信を持たせてあげられる場や時間を作ってあげたいと思ったのが、1つ目の理由です。

2つ目の理由は、MOCAというロサンゼルス現代美術館があるのですが、そこでは教育者のための教育プログラムが行われており、その中でアートを通して、批判的思考をどう持つかといった事を題材にしているプログラムがあります。そのプログラムに、子供たちを連れて行く事が出来るのですが、たった30人しか連れていけないという現実がありました。本当は、自分が担任しているクラスの子供たちを連れて行かなくてはいけないのですが、私は、違うクラスの子供たちを10人ずつ連れて行きました。

プログラムが始まって、子供たちに質問が投げられました。「この中で美術館に行った事がある人はいますか?」結果は、80%以上の子供たちが行った事が「無い」と答えました。30人の中で、6,7人しか行った事が無いという事は、全校で何人の子供が美術館に行った事が無いのだろうかと考えました。無い人の方が多いのであれば、学校に美術館を作ってしまえばいいじゃないかと思ったのが、2つ目の理由です。

----1番最初のプロジェクトに参加したアーティストについて、教えてください。

このプロジェクトを始めるにあたって、まず自分の周りの人に手伝ってもらえるようにと声をかけました。しかし、小学校のアートプロジェクトと聞いて、実際に行動に移す人は少なかったですので、有名なアーティストを呼べば、自ずと人は動くと考え、シェパード・フェアリーに声をかけました。そして、プロスケートボーダーのレイ・バービーに声をかけ、彼の奥さんは小学校の先生という事もあり、快く参加を決めてくれました。最初の年に参加したアーティストはこちらの方々です。

シェパード・フェアリー、レイ・バービー、トーマス・キャンベル、マイク・カーシュナー、アルバート・レイアス、そして、タカ・ハヤシです。これまで参加してくれたアーティスト達が快くこのプロジェクトに参加してくれている理由は、このプロジェクトを始めるきっかけとなった、レスリーのように、彼らも子供の頃「アウトサイダー」だったからではないかと思います。みんなと一緒のことができなくても、他の事に特殊な才能があり、それに気づくことができたからこそ、彼らはアーティストやスケートボーダー、ミュージシャンとして活躍していると思います。

----その後、周りの人のアートプロジェクトに対する見方は変わりましたか?

始めた当初は、校長先生と、意見の食い違いが沢山ありました。私は、校長先生に「5年生が小学校最後の年ですよ。彼ら、彼女らの締めくくりの年をどう素敵なものにするのかは我々次第です。」と言い続けました。

1回目のプロジェクトを終えた後、校長先生はその成果に驚いて、「ここまで素晴らしいものになるとは思わなかった」と言ってくれました。その場にいた他の先生たちは、「こんな事が起きるなんて夢のようだ」と感動のあまり泣いていました。 それ以降、校長先生や周りの先生も見方は変わったと思います。

----1番最近のミューラムプロジェクトについて教えてください。

アメリカは、多民族国家と言われています。しかし、よく見てみると、リトルトーキョーやチャイナタウン、タイタウンなど同じ人種同士がコミュニティーを形成して、他の人種とは一線を引き、離れて暮らしているという現状があります。今回のミューラムでは、バックグランドがそれぞれ異なるアーティストの自分のスペースに、理想の家とご近所を描いてもらう事にしました。

ただ、それだけでは自分の理想の家に自分の絵を描くだけでは寂しいし、今のアメリカを表現しているだけになってしまうため、自分の家やご近所以外の場所、他のアーティストが描いた家やご近所に好きな絵を描いてくださいとお願いしました。子供たちにはそれぞれの家を見てもらい、自分の家とは違うなと感じてもらうことや、違うけどこういう家も良いなと思ってもらい、生まれた所はここだけど、自分が住みたいと思える場所があるのであれば、そこに移ってもいいし、それは自分で選択出来るものなのですよと教えたかったのです。

----今では様々な企業がこのアートプロジェクトをスポンサードしていると思うのですが、その経緯を教えてください。

プロジェクト始めた当初はとても大変でした。 毎日、沢山のメールを企業に送り、電話をしていました。NOという企業の中にも、YESと言ってくれる企業が現れるはずと信じてやっていました。しかし、企業はそういったメールや電話を受けているため、まずは申し込みをして、次にこれが必要でと沢山のプロセスを踏まないといけませんでした。その時、私たちにはそこまでやる時間がありませんでしたが、諦めきれませんでした。そこで、まずは自分が知っている人から当たってみようと思ったのです。

ミューラルプロジェクトを始めた当初から頭の片隅にあった、VANSにスポンサーになってほしいと考えていました。その理由は、VANSという会社がカリフォルニアから始まったブランドであるという事と、ローカルなブランドであったという事でした。VANSはアートやスケートボード、パンク音楽などに精通していて、私もそのようなカルチャーに影響を受けた1人でしたし、このプロジェクトを理解してくれると思ったからです。

その頃、プロスケートボーダーでもあり、別のプロジェクトで私を手伝ってくれていた、レイ・バービーの紹介で、ラス・ポウプというアーティストを紹介してくれました。彼は、VANSで働いていた事もあり、電話で話をした後、すぐに行動に移してくれ、必要なものを全て揃えてくれました。また、沢山の企業が話を聞かずに、「出来ません」という中で、日本の三菱鉛筆は「我々は出来ませんとは言いません。プロジェクトの詳細を教えてください」と言ってくれたのです。私は1回目のプロジェクトの映像を見せました。すると彼らは見返りを求める事無く、快くポスカを寄付してくれました。

----このプロジェクトを今後も続ける予定ですか?

このプロジェクトを続けていくには、とても大変な作業と苦労があります。特に、自分の家族を犠牲にしなくてはいけない時があります。しかし、毎年プロジェクトを終えた瞬間、やって良かったという達成感と、もしこれをやめてしまったら、プロジェクトを始める前と変わらなくなってしまうし、子供たちのためにならないと思うのです。そして、プロジェクトが終わった際に、必ず子供たちの親御さんたちに、「来年もやるのですよね?」と声をかけられるのです。そう言われてしまうと、やめられないですよね。

----最後の質問になりますが、このアートプロジェクトを通して子供たちに伝えたい事はありますか?

沢山の事が考えられます。アートや音楽が、誰にでもできるチャンスがありますし、やっていいものだからこそ、やってみて自信をつけてもらいたいと思っています。絵を描いたり、音楽を奏でたりした事で、昨日より少しでも胸を張っている今日があるのであれば、それは嬉しい事です。このプロジェクトを行う事によって、彼らや彼女らが興味のある事や、日頃思っている事、考えている事を表現し、それを他の人と共有する事で、理解しあえるのですよ、と伝えたいです。アートや音楽を通して、自分の事を表現して、他の人に自分の事を知ってもらえる事も出来るのですよ、と伝えたいですね。

Erik Caruso(エリック・カルーソ)小学校教師

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